2023年12月版のゲーミングマウスパッド ティアーリストを公開します。 市場に出回っているものはほとんど揃えていますが、所持していないものもあるので注意してください。
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前回のティアーリストからの改善点
スピード・スピードバランス・バランス・コントロールバランス・コントロールの5タイプごとにティアーリストを作成することで、以前よりも細かくティアーを分類できるようになりました。この関係で、God tierからS tierに、S tierからA tierに移動したものも多いですが、そのほとんどは評価が下がったというよりも、その中間で区切られたという認識が正しいです。
一部を除くハードマウスパッド、特にガラスマウスパッドについてはティアーリスト形式での評価をやめました。
ガラスの性質上、表面加工で操作性のバリエーションを出しづらく、布製マウスパッドと比べて性能差が少ないように感じます。そのわずかな性能差で優劣をつけるのは非常に困難でした。
また、最近では購入タイミングによって販売価格に大きなぶれが生じたり、限定ドロップによる入手性の低下などが要因となり、相対的な評価が難しくなっていました。これらの理由から、ハードマウスパッドはティアーリストから除外した方が誠実だという結論に至りました。
ただし、Cerapad KINのような他のハードマウスパッドとは一線を画した性能のものについては、今後もティアーリスト形式での評価を続ける必要があると考えています。
ちなみに、各ガラスマウスパッドの細かな性能の差については、それぞれの製品のレビューで触れているので、ぜひ参考にしてみてください。そういった細かな差を気にしない人にとって、ガラスマウスパッドを選ぶうえで重要となるのはデザインや価格などの表面的な部分になります。
ゲーミングマウスパッド ティアーリスト (2023年12月版)
スピードタイプ
ハイスピード・スピードタイプに分類しているゲーミングマウスパッドに絞って表示しています。
Artisan NINJA FX Raiden series
国産メーカーArtisanのゲーミングマウスパッドは、VALORANTのオフライン大会を通して、プロプレイヤーからも高く評価されていることが目に見えて分かるようになり、年々注目度が高まっている印象です。
Raiden (雷電,ライデン) は細い糸できめ細かく織られたスピード系マウスパッドのシリーズです。スピード系マウスパッドは表面が粗いものが多いですが、Raidenはさらっとした肌触りと滑らかな滑りが特長です。特にMidは布製マウスパッドでも屈指の初動の軽さ・滑りの速さを持ち合わせており、Xsoftはその滑りをワンランク落として沈み込みによる制御も可能としています。
とにかく滑りの速い布製マウスパッドを探していて、表面がさらさらとしたものが好みという人にお勧めです。
※Artisanの製品名に含まれている「NINJA FX」はエッジにステッチ加工が施されたモデルのことを指しています。
Artisan NINJA FX Shidenkai V2 series
Shidenkai (紫電改,シデンカイ) は布生地にガラスビーズを埋め込んだ樹脂コーティングを施した非常に特殊なスピード系マウスパッドのシリーズです。
表面は樹脂コーティングの層で、とても硬いのが特長です。最も柔らかいXsoftタイプの硬さを測ってみると、裏面が14なのに対して表面は47でした。本来、布製マウスパッドの表面には柔らかい布生地が使われていることが多く、裏と表で硬さにここまで差が出るのは異質です。マウスを押し下げてもほとんど減速せず、滑りに一貫性があります。
初代Shidenkaiはスピードに特化した性能だったのに対し、V2は初動が重たく、左右に切り返すときや止めるときに強いブレーキ感が得られます。前作と比べて滑走速度は少し落ちましたが、比にならないほどの制御力を手に入れ、タクティカルFPSとの相性が高まっています。
手触りはすべすべとしていて心地いいです。しかし、汗をかいた状態では腕が滑りづらいので注意が必要です。
Kurosun Ninja Speed
おそらく今年で2番目に使用している時間が長いマウスパッドです。
表面に使われている布生地がとにかく優秀です。熱処理によって硬化させているため、耐久性が高く、湿度の高い環境でも滑りが落ちません。さらっとした手触りで、素肌が擦れても痛くなく、アームカバーを着用していても腕が滑りやすいです。
クッションは柔らかいですが、表面が硬いので減速しづらいです。10が8になるくらい。マウスを押し下げたときにソールの部分がピンポイントに食い込まず、その周辺がたわむイメージです。
粗すぎず滑らかすぎないフィーリングで、軽い滑り出しからは信じられないほどスッと止められます。滑りに一貫性があり、よほど力み癖のある人でない限り、トラッキングとフリックの両方で快適に使えるかと思います。
スピードバランスタイプ
スピードバランスタイプに分類しているゲーミングマウスパッドに絞って表示しています。
Artisan NINJA FX Hayate Otsu series
Hayate Otsu(疾風乙,ハヤテオツ) は表面にジャガード織りの布生地を採用したマウスパッドのシリーズです。ジャガード織りとは、織りや編みによって絵柄をつくったり立体感が出せる、とても自由度の高い織り方です。表面を拡大してみると一般的なマウスパッドとはかけ離れたものであることが分かります。
手触りはざらっとしていて、滑走時のフィーリングも粗いです。最大の特長は、マウスを滑らせたときに手元に返ってくるフィードバックが非常に強いことです。初動が軽くて滑りも速いのに、常にそれに抗っているかのような抵抗があり、スッと止めやすいです。この滑りと止めのバランス感が一線を画しています。
クッションの硬さを3種類から選べるのも強みです。Midでもマウスを止めるのに充分な抵抗があるように感じますが、コントロール性を重視したいならSoftやXsoftがお勧めです。
FreeFall SV BASE Control+
とにかく硬いことが特長で、現行の布製マウスパッドの中では最もハードマウスパッドに近い存在です。実際に硬度を測ってみたところ、ArtisanのMidは比にならないレベルで硬いことが分かります。一切と言っていいほど沈み込みません。
表面の布生地はざらっとしていて、いわゆるハイブリッドパッドの一種に分類できると思います。初動が軽くて左右への切り返しもスムーズで、滑りやすさと滑りの一貫性を重視した操作感となっており、トラッキングエイムに適しています。
今年は多くの新興メーカー・ブランドがマウスパッド市場に参入しましたが、FreeFallが最もインパクトのあるブランドだったように感じます。これまで見たことのないベース材、極細のステッチ加工は高く評価されているにもかかわらず、どのメーカーも真似できていません。
バランス タイプ
バランスタイプに分類しているゲーミングマウスパッドに絞って表示しています。
Artisan NINJA FX Zero series
Zero (零,ゼロ) はArtisanの現時点でのラインナップの中では最も滑りが遅いシリーズ。「迷ったらこれ」と言われることが多い製品ですが、個人的にも間違いないと思います。
手元に強いフィードバックが返ってくるのはHayate Otsuと共通しており、沈み込みによって減速しづらいMidでもスッと止められる不思議な感覚が得られます。
バランスタイプとしては初動が軽く、少し力んでいてマウスパッドが沈み込んだ状態のままマウスを動かし始めるときにも重さを感じないのは利点と言えます。
表面の布生地が柔らかいので、クッション硬度の選択がそのままマウスパッド自体の硬さに反映されます。マウス操作時に脱力しているならMid、要所で力むという人はSoftが合うと思います。力み癖が酷くて視点が震えたりする場合はXsoftを選ぶと改善される可能性があります。柔らかくなるほど滑走速度が鈍くなり、マウスを左右に切り返したときの抵抗も増します。
BenQ ZOWIE G-SR-SE Gris & Rouge
初動の軽さは並み、滑走速度は並み、左右に切り返したときの抵抗も並み。全てのパラメータが標準的なバランス系マウスパッドです。
個人的には最初の1枚にお勧めしたいのはこれです。もちろん気に入ればそのまま使えばいいですし、もしも何かに不満を抱いたとしても、自分が理想とする操作感がどういったものを自覚しやすいからです。
Gris (黒) とRouge (赤) の違いはあるにはありますが、静・動摩擦を測定してみたところ、人間には体感できないようなごく僅かな差であることが分かりました。この2つは色違いモデルとして扱ってしまっていいと思います。
LA ONDA BLITZ
知る人ぞ知るThe Whaleが携わっているゲーミングマウスパッドです。SNS上で日々あらゆるメーカーに噛みついているだけあって、彼のマウスパッドは文句なしの性能と品質を誇っています。
Hayate Otsuを彷彿とさせる特殊なパターンで織られた布生地に、柔らかいPoronベースが貼り合わせられています。唯一のArtisanの対抗馬ってところでしょうか。今後は硬さのバリエーションが追加される予定だそうです。
Artisan Zero Softのスピード性を高めたような特性を持ち、少しだけ初動が軽く、滑りも速いです。左右に切り返したときの抵抗も少ないです。マウスを滑らせたときに手元に強めのフィードバックが返ってきます。
マウスを押し下げると、沈み込みによって程よく減速しますが、ぬるっとした感触にならないのは他にあまりない特長です。常にきびきびと動き、滑りと止めのメリハリが感じられます。
※LIT取り扱い予定
コントロールバランスタイプ
コントロールバランスタイプに分類しているゲーミングマウスパッドに絞って表示しています。
InfinityMice x The Real Kenzo Shogun
表面はシルキーです。すべすべとしていて光沢があります。指でなぞってもザラつきどころか織り目が一切分からないほどで、トップクラスに肌触りが良いです。アームカバーを着用した状態でも腕がスムーズに滑ります。
その肌触りの良さをマウスの滑りにも反映させたかのような、バターのように滑らかなフィーリングが特長です。柔らかいコントロールマウスパッドにありがちな初動の引っ掛かりを感じず、初動から止めるまで滑らかに滑ります。
クッションは柔らかく、沈み込みによって程よく減速します。表面が滑らかなマウスパッドほど減速したときにぬるっとした感触になりがちですが、このマウスパッドはきびきびと動くので微調整も行いやすいです。
※LIT取り扱い予定
Pulsar Gaming Gear ES2 3mm
コントロール系マウスパッドの中でもトップクラスに肌触りがよく、アームカバーを着用した状態でも腕がスムーズに滑ります。Infinity Mice Shogunのほうがすべすべかも。
滑り出しの軽さは並みで、左右に切り返したときの抵抗は大きいです。薄めで柔らかくて反発感が弱いクッションの影響か、沈み込みによる減速がすさまじく、コントロールバランスタイプでも屈指のブレーキ感の強さを誇ります。
要所でマウスを押し下げることで追加の摩擦を得たいと考えている人にお勧め。
ちなみに、開封直後はバランスタイプに並ぶほど滑りが速いように感じます。しかし使い始めて数日で滑りがワンランク落ち、その状態が長期で持続するイメージです。
Superbeings Lab Memoria Pro
Artisan Zero Softのコントロール性を高めたような感じ。表面を拡大するとArtisan Zeroに使われている糸に近いように見えます。表面に不快じゃない程度のざらつきがあり、マウスを滑らせたときに手元に強いフィードバックが伝わるのが特長です。
初動の軽さは並みで、マウスを動かし始めるときに重たいと感じず、難なく微調整ができる程度。マウスを左右に切り返したときの抵抗も並みで、マウスを大きく振ったあとに微調整するときに多少の抵抗があって制御しやすいと感じます。
マウスパッド自体は柔らかく、マウスを押し下げるとかなり滑りが鈍くなります。ブレーキが掛かるというよりは鈍くなるという感じ。ぬるっとした感じでもありません。
コントロールタイプ
ハイコントロール・コントロールタイプに分類しているゲーミングマウスパッドに絞って表示しています。
Lethal Gaming Gear Saturn Pro series
個人的に旧型Saturn Proがとても好きで、今でも最も優れたコントロール系マウスパッドだと思っています。新型Saturn Proは、そんな旧型よりも分厚いベース材を備えていて、硬さをSoftとXsoftの2種類から選べるようになりました。
旧型との決定的な違いは、マウスを押し下げたときに表れます。旧型は沈み込むとすぐに底につくような感触があり、強いブレーキが掛かるイメージでした。新型はクッションが分厚くなった影響か、沈ませても急なブレーキが掛からなければ、ぬるっとした感触にもならず、そのまま滑りが鈍くなります。力の入れ具合に応じて素直に滑りが変化し、コントロール系マウスパッドの中で最も使い手による調整が効くマウスパッドだと感じます。
つまみ持ちや浅めのつかみ持ちなど、マウスを動かす時にあまり圧が掛からない人にとっては、滑りがワンランク速いように感じられるかもしれません。
さいごに
2023年12月時点でのゲーミングマウスパッド ティアーリストを公開しました。今年はマウスパッドの種類が増えに増え、全体的なクオリティが底上げされた印象を受けます。
God tierに選んでいるマウスパッドは、品質の高さはもちろん、表面やベースの特性にも優れているものばかりです。それぞれのマウスパッドは個別でレビューもしているので、ぜひ参考にしてみてください。
膨大な数のマウスパッドからティアーリストを作成しているので、動画だと見づらい、一覧で見たいという人は概要欄のWebサイトからご覧ください。
今年はマウスパッドの静摩擦力や動摩擦力、硬度の測定なども始めて、以前よりもマウスパッドのことについて深く理解した一年でもあったので、来年からはさらに詳細なレビューを出していきたいと考えています。
実はGod tier以外にも魅力的なマウスパッドはたくさん眠っています。2024年には「スピード系マウスパッドTop10」のような形で、各タイプの優れたマウスパッドについて詳しく解説する動画をアップロードする予定です。そこではGod tier以外のマウスパッドもたくさん選んでいるので、そちらも楽しみにしておいてください。
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